初めてのデリバリーバイト〜原付バイクで事故る手前のエトセトラ〜

スキマバイトのメルカリハロから突然のお知らせ。

しばらくメルカリハロを使ってなくて、この通知に気付いたのが1月31日の朝。

えっ、早期終了?!お詫びに1月中に1回でも勤務したら5000円分のポイントがもらえる‥だと?

この『ポイントザクザクキャンペーン』(2024年の9月10月にたくさん働いた人は、翌年の1月と2月の勤務のたびに月10回まで給与プラス1,000ポイントがもらえるというもの)の対象に入るがために、某黒猫系配送業者の仕分けバイトをがむしゃらにやったというのに。次から次へとベルトコンベアーで流れてくるダンボールに貼られた数字を血眼になって探し出し、自分のレーンに引き込み、外国人スタッフと片言でやり取りし、置き忘れた水筒を捨てられてしまう憂き目にあったりなど色々ありながらもがんばって働いたのに。1月は忙しくてメルカリハロで働けてなかったけど、2月からはプラス1000Pでザクザク稼ぐぞ!と思っていたのに。

お詫びというなら対象者全員に平等に配るべきではないか?なぜ1月中に一度でも働くなどと条件を付けるのか?まぁ、12月に知らせが届いていたのに1月末の締切当日に気づく自分も大概だけど。

「・・・しょうがない。今日は午後からADHDのデイケアに行く予定あるし。」一旦は諦めかけた。でもやっぱり、5000円をもらい損ねるなんて、あってはならないことではないか?

そう思い今日の募集を見てみると、あった。自分ができそうな唯一のバイト、18時から3時間のデリバリーがあった。家から遠い23区だけど、なんとか間に合う。

私鉄の駅徒歩5分のインドカレー屋さん。『未経験者歓迎』の文字。原付バイクは一度も乗ったことがないけど、車の免許があれば乗れるはずだよね?未経験者でも歓迎されてるんだからいいよね?そう思いながら、迷いながらも「えいや」と応募ボタンをポチしてしまった。

そして、案の定、えらい目にあった。

 

△+△

 

18時前、寂れた商店街の小さなインドカレー屋さんを訪れると、片言のインド人コックさんが迎えてくれた。もう一人スリランカ人コックさんと従業員は二人だけで、日本人は一人もいない。店長は日本人だけど今日は休みなのだという。

ここまでどうやって来たかと問うので「トレイン」と答えると、デリバリーに電車で行かせられそうになり慌てて免許証を見せる。電車なら交通費は自腹、原付バイクだと費用はかからないと言うなら、原付バイクで行くに決まってる。でもこれが間違いの元。300円くらい自腹で出して電車で行っとけば良かったと後で後悔する羽目になるのだった。。

始まってすぐはお客さんはまだ誰もいなくて、とりあえず2階の座敷でチラシを半分に折る作業をするように言われた。暖房の効いた暖かい店内で、ぬくぬくとチラシを半分に折りながら、「あぁ、このままあっという間に3時間経ってくれたらいいなぁ〜。口コミにもチラシ折りとポスティングだけで終わった人がいたし、運動がてらポスティングするのもいいかな。」などと悠長に考えながら30分ほどが穏やかに過ぎていった。

・・・下から、「デリ!デリ!」と呼ぶ声がする。げっ!来た!注文が入ってしまった!

慌てて上着をはおり1階に下りる。相変わらず狭い1階席には客がいない。インド人に配達先の住所を見せられワタワタとマップを確認すると、けっこう遠い。大通りを通って20分以上かかる。と、そこで自分の失態に気づいた。口コミに「スマホホルダーがないため道を確認するのに工夫が必要」と書いてあったから自分の自転車に付けてあるスマホホルダーを外して持って来ようと思っていたのに、忘れた。

外に出るとでっかい原付バイク。ピザ屋とかでよくある三輪ではなく二輪。行きにYouTubeで一通り発進の仕方とか二段階右折のやり方は見たのだけど、いざさわってみると軽くパニクった。どうしよう、分からない。スタンドの使い方とか、エンジンの掛け方が分からない。やべえ。必死にインド人に操作方法を聞く。インド人は怪訝な顔をすることもなく、丁寧に教えてくれた。ありがたかった。日本人店長だったら乗らせてもらえなかったかもしれない。

よし、私はできるぞ!自転車や車を自在に運転できるんだから、原付くらい初めてでも乗りこなせる。大丈夫だ!自分に気合を入れた。インド人が原付バイクの前ボックスのフタの上に、マップが表示された私のスマホをポンと置いてくれた。ストラップが首から掛けられた状態のスマホ、すごく画面が見づらくあまりにも不安定だけど仕方ない。インド人は「気をつけて」と送り出してくれた。

右手でハンドルを回すと、前進した。音がすごい。なんだこれは!想像してたのと違う!前にも後ろにも大きな荷物ボックスが付いていてめちゃくちゃガタガタするよ!

落ち着け。一回落ち着こう。細い通りをゆっくりゆっくり進んだ所で、小さな十字路に遭遇。ここで何を思ったのか、私は原付バイクを下りた。最初の角は無理をしないで、歩いて押して曲がろうとしたのだ。

皆さんは、危険だから絶対にエンジンを掛けたままバイクを下りたりしないでくださいね。

バイクは、右のハンドルを前方に回すことによってアクセルがかかる。この操作が、自転車や車とは全く異なる新しい動きだったため、歩きながら押して曲がろうとした際に、うっかり右ハンドルを前方に回してしまっていたのだ。

あれれれれれれ!!!!!必死にブレーキを掛けるも、止まらない。止められない。ああああああああっっっっっっぶつかるっっっっっ!!!!スローモーションで、マンション前の縁石にぶつかって私の手を離れた原付バイクは思いっきり横倒しになった。

「バーン!!」

やってしまったと思った。倒れる瞬間、触覚のように両側に飛び出て生えているミラーが絶対に折れたと思った。でも折れていなかった。それからスマホストラップの付け根が千切れてスマホが道路に飛ばされていた。先月に自分の自転車の前輪に挟んで真っ二つにして、買い換えたばかりの20万近くする最新アイフォン。私の命。奇跡的にスマホも、画面割れもなく無事だった。

呆然としているとすぐにおばさんとおじさんが寄ってきて声をかけてくれた。「大丈夫?」と言われて「わああああすみませんすみません」としか言えない私。「まずはエンジンを切ろうね」とおじさん。「はい!すみません!」エンジンを切った原付バイクを起こし、今度はエンジンの掛け方を教えてもらう。

「すみません、デリバリーのアルバイトで、今日初めてで」「ええっそうなの」「ありがとうございました!他に注意事項は!?」「とにかく気をつけて!」「はい!行きます!」

タイムスリップしたみたいな寂れた商店街、みんな優しかった。というか、人通りがなかったおかげで人にぶつけなくて本当に良かった。

ガクガク震える足で、リスタート。

大通りに出て、恐怖が襲う。場所は大都会、品川。夜19時前、めちゃくちゃ人が歩いている。車やトラックにビュンビュン抜かされながら、ガタゴト走る不安定な原付バイク。ヘルメットの締めが甘くてスピードを出したら外れそうだ。赤信号で止まるたびにスマホを取り出してマップを確認。4車線のでっかい交差点では無事に二段階右折をこなし、30分以上かけてようやく目的地のタワマンに到着。しっかりエンジンを切って、押し歩きしてエントランス前のスペースに止めることができた。

「アリスパイス(仮名)です!ご注文の商品をお届けにあがりました!」

もうそっからはハイテンション。開放感からニッコニコで走ってお部屋まで。玄関で商品を渡した後、帰ろうとしたらお届けした人が廊下に出てきて、店の保温袋ごと渡してしまっていたのを、中身のビニール袋を取り出して返却してくれた。「すみません初めてで!ありがとうございます!助かりました!」と私。

後から気づいたけど、思いっきり横倒しになったカレー、大丈夫だったかな?こぼれてはないにしろ蓋の裏とかにカレーが飛び散ってたと思うけど、大目に見てくれたかな。

無事に1件目の注文をお届けしてほっとしたのも束の間、帰りにまた泣きそうになる。(次から次へとトラブルが起きて、この日記なかなか終えられないのね)

止めた原付バイクの、スタンドの下げ方が分からずパニック。どんなに思いきり体重をかけてスタンドを押したり踏んだりしてもうんともすんとも言わない。ここで15分くらいを費やす。泣きそうになりながらインド人に電話するも、無事にデリを届けられたことしか伝わらず、「自分で調べる」と言って電話切る。「原付 スタンド 下げ方」でYouTubeを調べても見つけられない。さっきインド人に乗り方をレクチャーしてもらった時、落ち着いてスタンドの上げ方までしっかり聞いて実践しておけば良かった。刻一刻と時間は過ぎていき、焦りが頂点に達した頃、スクーターを前に押すようにしてスタンドを踏んだところ、ようやくスタンドが外れた!!

本当に胸を撫で下ろした。ここでバイト時間が終了することさえ頭によぎったから。

※正しくはスタンドを踏む必要はなく、左でハンドル、右でシートの後ろを持って、一度後ろに引き、その反動を利用して一気に前に押し出すんだけど、そんなの初見には分からないよね。。

そうこうして、ようやく店に帰ってきた時には時刻はもう19時50分くらいだった。1件届けるのに1時間半近くかけてしまった。原付バイクを店の前に止めたらインド人が出てきて、スタンドの立て方と下げ方をやって見せてくれた。優しさにジンとしていると、バイクの左側の車体に白い大きな擦り傷ができていることに気づいた。

あっ。。これはさっき私が横倒しにした時に付けた傷・・・かな?、、だね。

幸いシルバーの車体だったためあまり目立たず、白い大きなスラッシュ模様に見えなくもない。インド人の顔をちらと見るも、気づいているのかいないのか、何も言われなかった。

再び2階でチラシ折りが始まった。さっきまではチラシ折りも「ゆっくりでいい」と言われたから一枚一枚のんびり丁寧に折っていたけど、今度はものすごい勢いでシュババババッと折りまくった。チラシ折りにおいてピッタリ1ミリもずらさない正確さは必要ないのだ。無能を雇ってしまったお詫びに、優しく接してくれたお礼に、せめてもの恩返しをしたく、8枚ぐらい一気に折ってバラしてどんどん積み重ねていった。

インド人が2階の食器を片付けに来た際、「ビギナー?」と言って笑いかけてくれて、うれしかった。「いつも車や自転車は運転してるんですけどね!」などと軽口を交わし、喜びを噛み締める。どうやら私は難所を乗り越えられたみたいだ。事故に遭わず、壊すことも間違えることも怒られることもなく、今日という難所を無事に乗り越えられたみたい。

その後もう1件注文が入ったけど、ラッキーなことに大通りには出ない近所で、20分程で無事にお届けできた。

そして終業後には、まかないのカレーを食べさせてくれた。肉なしが良かったけど、そんな注文を付けれる立場にはないと思い黙っていたら、出されたのはなんと肉の入っていない野菜カレーだった。細いライスも噛むたびに異国情緒あふれる風合いが口に広がり、なんだこれは、絶品。食べるのが遅くいつもみんなを待たせてしまう私だけど、この日は7分くらいで一気に平らげた。びっくりするくらいお腹が空いていて、沁みるほど美味しかった。

最後、「ありがとうございました」と言って帰ろうとした時に、もう一度しっかりお礼を言いたくてインド人に近づいて再び挨拶をした。このグッと近づいた際に、インド人がビクッとした表情を浮かべた。ちょっと怖がらせてしまったみたい。「ほんとに今日はありがとうございました!」2回言う必要なかったかな。でも本当に、この大らかなインド人のおかげで今日を救われた気がするから。

 

△+△

 

帰りの電車でお気に入りのふわふわネックウォーマーを落とし、問い合わせたけどついに見つからなかった。まぁ、いいよ。セリアで買った110円のやつだし。今日はその40倍近く稼いだわけだし。三分の一が交通費に消えたとはいえ、夕飯代が浮いたわけだし。

その日のうちに勤務先から評価コメントが入った。ドキドキしながら確認すると、高評価のコメント。これにて全ての重圧から解放され、心がほかほかになって眠りについた。

そして2月末日、忘れた頃にメルカリハロより5,000ポイントもちゃんと付与された。

やった、米が買えるぞ!良かった!無謀な挑戦だったしこんな危険を犯すべきではなかったけど、とはいえ、やって良かった!これで次こそは原付バイクを乗りこなせるぞ!

また今度、『経験者限定』のデリバリーバイト、やってみようかな。

ありがとうございました✨

あの日の勢い忘れず、日々是挑戦。日記の更新の方もがんばりたいです!

 

ArispiA