雨の日の観覧車

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あなたに出会ったのは、
私がひとり暮らしを始めてまもない4月のある肌寒い日でした。
四畳半の隅の小さな箱の中にそっと現れたあなたを、
一目見た瞬間から私はもう夢中になっていたんです。

今振り返っても、あの出会いは特別だったって思います。
あなたが着ていた赤いチェックのジャケットをまねして買ったり
あなたが弾いていたピアノの曲をまねして練習したり
そういうことだけじゃなくて、もっと根本的に私に影響を与えたんです。
うまく言えないけど、やっぱりあれは恋だったんでしょう。

まるで一方通行の想いだってことは分かっています。
たまたまつけた深夜放送の映画だってことくらい。
だってあなたは今年で49才になります。
あの映画の中のハタチの少年ではもうありません。
ぐるりと一周したらまた始めから再生される
ビデオのようにはいかないんですね。

そうそう、雨の日の遊園地に行くシーンがありましたよね。
誰もいないうらぶれた遊園地で、傘をさして二人つっ立って、
手もつながずに、無言で。
小さな雨粒がかかった前髪は、
場違いみたいにあなたを素敵に見せていました。

そして観覧車に乗る二人。
窓の外をみつめながらあなた、
まるでひとごとのように
たったひとことだけれど
「すきだよ」って呟きました。

おかしいんですけど
私あのとき、先を越されたって、そう思ったんですよ。

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橋本正太郎 改め「青い街」のシンジへ

▲ 感想 ▲
これは・・・なんか鳥肌がたった。
20才の時の大学のゼミの課題で作った、確かラブレターをテーマにした完全なる創作物だけど、なんて恥ずかしいものを作っていたんだろうと。

私は昔からこういう恥ずかしいものを、わりに平気で人前に晒していたんだなぁと改めて気づいた。そして、自分が今 世に放っている曲やら文章などにも通じるものがあるなぁと。ブレブレだと思っていたけど、やはり一貫性が見て取れる。
結局一生、私はこういう恥ずかしいものや、子供じみたもの、妙にセンチメンタル気取った滑稽なものしか作れないのかもしれない。

断捨離をする過程で、過去に作った創作物がたくさん出てきた。開き直ってどんどん晒していこうと思う。願わくば新作も交えつつ、どんどん晒して、飽きるほど出してって、ひとつひとつの恥ずかしさを薄めていければいいのだけど。

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